前回は、フィットネスクラブの社長から「社員は100円ライターだ」と言われた衝撃と、「自分で会社をやるしかない」と決意するまでをお話ししました。
今回は、その決意を胸に、社長になるための「修行」を始めた頃のお話です。
フィットネスクラブから建築・不動産の世界へ

フィットネスクラブ時代、お世話になっていた会社顧問の方から紹介されたのが、創業者が一代で大きくした大阪の建築不動産会社でした。
なぜフィットネス業界から、全く異なる建築・不動産業界に行ったのか。
それまでフィットネス業界という、いわば「表舞台の綺麗な業界」を見てきた反面、どこかで「自分で将来会社をやるのであれば、海千山千の荒波が渦巻く業界も一度見ておかなければ」という想いがあったからです。
その建築不動産会社では、会長直属の「企画調査課」に配属されることになりました。
ありがたいことに会長にとても気に入られ、「田中、私が持っている土地を全部見てまわって、どうやったら活用できるか考えてみぃ!」と、たくさんのチャンスをいただきました。
建売住宅やマンション、土地を仕入れる際、どんな法律が絡み、どう行政と交渉し、銀行にはどんな書類を提出するのか。
法務も絡む一気通貫のビジネスモデルを通じて、まさに「商売のいろは」を徹底的に叩き込まれました。
ここで働いていた1年半の間に、宅建(宅地建物取引士)の資格を取得し、交渉力もつき、裏社会も見えたことで、「ここで学ぶべきことは一段落したな」と退職を決めました。
ただ、将来社長になるためのスキルは確実に身についたものの、この時期の私のお財布事情は文字通り「極貧」でした。
フィットネスクラブ時代の年収は約700万円ありましたが、新たな会社での年収は250万円程度へと激減。
さらに追い打ちをかけるように、この時期に離婚も経験しました。
「もう何でも全部持っていってええよ」と妻に伝えたところ、その言葉通り本当に全部持っていかれてしまいました(お見事!と言うしかありません笑)。
手元に現金はほぼ残らず、残ったのは家ローンだけ。
家族も、お金も、すべてを失いました。
当時は本当にお金がなく、前年の住民税すら払えないレベル。 仕方なく役所に行って事情を説明し、「住民税を分割で払わせてもらえませんか?」と相談したところ、「一回500円でもいいから、払ってください」と言われました。
そして、1枚あたり500円の、笑ってしまうほど分厚い納付書の束を受け取って帰宅。
「いやー、役所相手でも交渉してみるもんだなぁ……!」と、社会勉強になりました(その後、延滞金含めて1年半で完済笑)。
とはいえ、30歳半ばの立派な大人が、ジュース1本買うことすらためらうような生活がしばらく続きました。
でも不思議なもので、人間、ここまでどん底まで落ちるとあとは上がるしかありません。気持ちがすっかり吹っ切れて、むしろ清々しく、前を向いて歩けるようになりました。
また、この頃から年間数百冊という本を大量に読み漁るようになりました。 当時の私には、進むべき道を教えてくれるメンターも、相談できる先輩もいませんでした。
そのため、私はその後の人生において、すべての答えを本の中に求めるようになりました。
社長になるための「修行」をスタート
そこから(数社転職し)、私は次に、FC(フランチャイズ)本部での運営経験を積もうと考えました。
そこで、紙媒体でのdodaで求人をいくつか探した結果、「珈琲館のフランチャイズ開発部」に転職することになりました。
当時の珈琲館は、新しい喫茶店の業態を色々と展開しようとしていた過渡期で、出店のための「物件開拓」のスキルが求められていました。
それまで建築不動産業界で泥臭い交渉も行ってきた私ですが、根底にはしっかりとした倫理観(賄賂は天に誓って受け取ったことはありません)を持っていたからこそ、この新たなフィールドでも、これまでの経験を大いに活かして物件を動かしていくことができると考えました。
珈琲館では、飲食業の出店戦略やフランチャイズ本部の仕組みを徹底的に実践で身につけていったのですが、ある日のこと。
大前研一さんの本を読んでいたところ、こんなことが書かれていました。
「近い将来、社会は大きく分類(分断)される。会社員・公務員のグループ、会計・弁護士・医者のグループ、経営者のグループ、投資家のグループになる」と。
それを読んだ瞬間、
「今のままでは、自分は会社員に分類されたまま終わってしまう。手遅れにならんうちに、はやく動かんと!」
と大焦り(笑)。
当時の私は、「最終的には投資家になる」とは思っていましたが、それにもまずは自分で事業をつくり、経営できる力を身につけなければ話になりません。
本の内容を素直に受け取った私は、すぐに珈琲館を退職し、「社長になる場所」を本気で探し始めました。
ーー大前研一さんの本に背中を押され、珈琲館を飛び出した私。「社長になる場所」を探し始めます。
次回は、新聞の求人広告で運命的な出会いを果たし、ネクストジャパンに入社する前後のお話です。